「キタッラ」という名前のパスタをご存知ですか?イタリア語で「ギター」を意味するこのパスタは、その名の通り、弦を張った独特な道具で作られる、断面が四角いユニークなロングパスタです。 もちもちとした力強い食感と、ソースがよく絡む表面のざらつきが特徴で、一度食べたらやみつきになること間違いなし。
この記事では、そんな魅力あふれるキタッラ パスタとはどのようなものなのか、その歴史や特徴、名前の由来から、ご家庭でも楽しめる美味しいレシピまで、わかりやすくご紹介します。これを読めば、あなたもきっとキタッラの虜になるはずです。
キタッラ パスタとは?その基本情報
まずは、キタッラというパスタがどのようなものなのか、基本的な情報から見ていきましょう。発祥地や名前の由来を知ることで、キタッラへの理解がより深まります。
キタッラ パスタの概要と発祥地
キタッラは、イタリア中部に位置するアブルッツォ州で生まれた、卵を使った手打ちのロングパスタです。 この地域はアドリア海に面している一方で、山岳地帯も広がる自然豊かな土地です。キタッラは、このアブルッツォ州の郷土料理として古くから親しまれてきました。
もともとは「マッケローニ・アッラ・キタッラ」と呼ばれていましたが、現在では単に「キタッラ」と呼ばれることが一般的です。 アブルッツォ州では、「マッケローニ」という言葉がパスタ全般を指す言葉として使われることもあるようです。 伝統的には家庭で作られる生パスタでしたが、近年では乾燥パスタとしても流通しており、日本でも手に入れることができます。
「ギター」が名前の由来?キタッラという名前の意味
「キタッラ(Chitarra)」とは、イタリア語で「ギター」を意味する言葉です。 なぜパスタにこのような名前が付けられたのでしょうか。その秘密は、パスタを作るための専用の道具にあります。この道具は、木製の枠にギターの弦のように細い鋼線を張ったもので、見た目がギターに似ていることから「キタッラ」と呼ばれています。
そして、この道具を使って作られるパスタそのものも「キタッラ」と呼ばれるようになったのです。 つまり、道具の名前がそのままパスタの名前になった、というわけです。このユニークな名前の由来を知ると、より一層このパスタに親しみが湧いてきますね。
キタッラ パスタの歴史と文化的背景
キタッラの起源は、1860年頃にアブルッツォ州のラクイラという街で生まれたとされています。 ラクイラは山々に囲まれた内陸の街で、かつては魚介類の入手が困難でした。 そのため、この地域では羊の飼育が盛んで、キタッラには伝統的に子羊の肉を使った煮込みソース(ラグー)が合わせられてきました。 これは、その土地で手に入りやすい食材を活かした、理にかなった組み合わせと言えるでしょう。現在では物流が発達し、魚介類を使ったソースと合わせることも増えていますが、この伝統的な組み合わせは今でもアブルッツォ州の味として愛され続けています。 このように、キタッラはその土地の食文化や歴史的背景と深く結びついたパスタなのです。
キタッラ パスタのユニークな特徴
キタッラ パスタは、他のパスタにはないユニークな特徴をいくつも持っています。その独特の形状や食感が、多くの人々を魅了してやみません。ここでは、キタッラの持つ魅力的な特徴について詳しく見ていきましょう。
断面が四角い!独特の形状の秘密
キタッラの最大の特徴は、なんといってもその断面が四角いことです。 一般的なスパゲッティの断面が円形であるのに対し、キタッラは正方形に近い形をしています。この独特の形状は、前述した専用の道具「キタッラ」によって生み出されます。
パスタ生地を麺棒でこの道具に押し付けることで、鋼線の弦が生地を切り分け、断面が四角い麺が出来上がるのです。 この製法は、パスタマシンで作るのとは異なり、麺の表面に独特の質感をもたらします。太さは2mm前後のものが一般的ですが、お店やメーカーによっては3mmから5mm程度のものもあります。
もちもちで力強い食感の理由
キタッラは、非常に弾力があり、もちもちとした力強い食感が楽しめます。 この独特の歯ごたえは、主に2つの要因によって生まれます。一つは、生地の材料です。キタッラは伝統的に、タンパク質含有量の多いデュラム小麦のセモリナ粉に卵を加えて作られます。 卵を加えることで、生地にコシと豊かな風味が加わり、しっかりとした食感になるのです。
もう一つの理由は、その四角い断面形状です。角があることで、噛んだ時にしっかりとした抵抗感が生まれ、独特の噛みごたえを生み出します。このむっちりとした食感は、一度味わうとクセになる美味しさです。
ソースがよく絡む表面のざらつき
キタッラのもう一つの大きな魅力は、ソースが非常によく絡むことです。 これは、専用の道具「キタッラ」を使って製麺する際に、麺の表面に微細な凹凸、つまりざらつきが生まれるためです。 パスタマシンでつるりと仕上げる麺とは異なり、このざらざらした表面が、まるでスポンジのようにソースを吸い上げてくれるのです。そのため、濃厚なソースと合わせても、ソースとパスタが一体となった深い味わいを楽しむことができます。 また、ブロンズ製のダイス(パスタを成形する型)を使って作られた市販の乾燥キタッラも、同様に表面がざらついており、ソースとの絡みが良いのが特徴です。
キタッラ パスタの作り方と専用道具「キタッラ」
キタッラ パスタは、ご家庭で手打ちに挑戦することも可能です。ここでは、そのために必要な専用の道具「キタッラ」と、基本的な生地の作り方、そして成形方法についてご紹介します。
専用の道具「キタッラ」とはどんなもの?
「キタッラ」は、キタッラ パスタを作るために不可欠な専用の道具です。 木製の長方形の枠に、ピアノ線や鋼鉄製の細い弦がギターのようにびっしりと張られています。 多くの場合、片面は細い麺用、もう片面は太い麺用といった具合に、弦の間隔が異なる2種類の面を持つ構造になっています。
生地をこの弦の上に置き、麺棒で上から均等に力を加えて転がすことで、生地が弦によって押し切られ、断面が四角いパスタが作られます。 このシンプルながらも考え抜かれた道具こそが、キタッラ独特の食感と形状を生み出すのです。イタリアの家庭では、代々受け継がれてきたキタッラを使うこともあるようです。
家庭でできるキタッラ パスタの生地の作り方
キタッラの生地は、比較的シンプルな材料で作ることができます。伝統的なレシピで基本となるのは、デュラム小麦のセモリナ粉と新鮮な卵です。 セモリナ粉に卵、そして少々の塩とエクストラバージンオリーブオイルを加えて混ぜ合わせ、ひとまとまりになったら台の上でなめらかになるまでしっかりとこねます。
こねあがった生地は、乾燥しないようにラップなどで包み、30分から1時間ほど休ませるのがポイントです。これにより、生地が落ち着き、後で伸ばしやすくなります。南イタリアではタンパク質含有量の多い硬質小麦であるデュラム小麦を使うのが特徴で、これがしっかりとした歯ごたえを生み出します。
キタッラを使ったパスタの成形方法
生地を休ませたら、いよいよ成形の工程です。打ち粉をした台の上で、麺棒を使って生地を薄く、キタッラの幅に合わせて伸ばしていきます。 この時、生地の厚みが均一になるように気をつけることが大切です。生地がキタッラの弦の太さと同じくらいの厚さになったら、キタッラの道具の上に生地を乗せます。
そして、麺棒を使って生地の上を力強く、リズミカルに転がします。 すると、生地が弦によって次々とカットされ、下へと落ちていきます。これがキタッラです。全ての生地をカットし終えたら、麺同士がくっつかないように軽くほぐし、打ち粉をまぶしておきましょう。このリズミカルな作業は、まさに楽器を奏でるようで、作る過程も楽しむことができます。
キタッラ パスタと相性の良いソース
もちもちとした食感とソースの絡みやすさが魅力のキタッラは、様々なソースと相性抜群です。ここでは、特におすすめの組み合わせをいくつかご紹介します。
濃厚な肉のソースとの組み合わせ
キタッラの力強い食感と存在感は、濃厚な肉のソースと非常に良く合います。 発祥地アブルッツォ州の伝統的なレシピは、子羊のラグーソースです。 子羊肉を香味野菜などと一緒にじっくり煮込んで作るソースは、キタッラの風味豊かな生地と絡み合い、格別な味わいを生み出します。また、牛肉や豚肉を使った一般的なミートソースや、猪などのジビエを使ったラグーソースとも相性抜群です。 しっかりとした味わいのソースを受け止めることができるキタッラだからこそ、肉の旨味を存分に楽しむことができるのです。
魚介を使ったソースとの相性
伝統的には肉料理と合わせることが多かったキタッラですが、近年では魚介を使ったソースとの組み合わせも人気を集めています。 例えば、アサリやムール貝を使ったトマトベースのボンゴレ・ロッソは、魚介の旨味とトマトの酸味がキタッラによく絡み、美味しい一皿になります。 また、エビやイカ、白身魚などを加えたペスカトーレもおすすめです。キタッラの表面のざらつきが、魚介の風味豊かなソースをしっかりと捉え、口の中いっぱいにその美味しさを広げてくれます。アンチョビを隠し味に加えると、さらにコク深い味わいになります。
野菜ベースのシンプルなソースもおすすめ
濃厚なソースだけでなく、野菜の風味を活かしたシンプルなソースともキタッラはよく合います。例えば、トマトとバジルを使ったシンプルなポモドーロソースは、キタッラの小麦と卵の風味そのものを引き立ててくれます。 他にも、旬の野菜をたっぷり使った菜園風のソース(オルトラーナ)や、キノコのクリームソースなども良いでしょう。 また、ローマの名物料理である「カチョ・エ・ペペ」(チーズと黒胡椒のパスタ)にキタッラを使うのもおすすめです。 シンプルな味付けだからこそ、キタッラ本来の食感や味わいをダイレクトに感じることができます。
キタッラ パスタと他のパスタとの違い
世の中にはたくさんの種類のパスタがありますが、キタッラは他のロングパスタとどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、代表的なロングパスタであるスパゲッティ、リングイネ、タリアテッレと比較してみましょう。
スパゲッティとの違い
日本で最も馴染み深いロングパスタといえばスパゲッティでしょう。スパゲッティの最大の特徴は、断面が完全な円形であることです。 これに対してキタッラは、前述の通り断面が四角形です。 この断面形状の違いが、食感に大きな差を生み出します。スパゲッティはつるりとした喉越しが特徴ですが、キタッラは角があるため、よりしっかりとした歯ごたえと噛みごたえを感じることができます。また、一般的にスパゲッティは卵を使わない生地で作られることが多いのに対し、伝統的なキタッラは卵麺である点も大きな違いです。
リングイネとの違い
リングイネも、キタッラと同じく少し変わった断面を持つパスタです。その断面は、円形ではなく平たい楕円形をしています。 イタリア語で「小さな舌」を意味する名前の通り、少し潰れたような形が特徴です。 キタッラの断面が四角いのに対し、リングイネは楕円形であるという明確な違いがあります。 食感としては、リングイネももちもちとしていますが、キタッラほどの角がないため、より滑らかな舌触りです。ソースの絡みはどちらも良いですが、形状の違いから異なる絡み方を楽しめます。リングイネは特に、ジェノベーゼソースのようなオイルベースのソースと相性が良いとされています。
タリアテッレとの違い
タリアテッレは、きしめんのような平たい形状のロングパスタです。 キタッラが棒状であるのに対し、タリアテッレはリボン状であるという点で、見た目からして大きく異なります。タリアテッレも卵を使った生地で作られることが多く、濃厚なクリームソースやミートソースと相性が良いという点ではキタッラと共通しています。 しかし、その食感は大きく異なります。幅広で薄いタリアテッレは、ひらひらとした柔らかい食感が特徴です。一方で、断面が四角く厚みのあるキタッラは、よりむっちりとしていて弾力の強い、噛みごたえのある食感が楽しめます。
キタッラ パスタの魅力を再発見
この記事では、イタリア・アブルッツォ州生まれのユニークなパスタ「キタッラ」について、その基本情報から特徴、作り方、美味しい食べ方、そして他のパスタとの違いまで、幅広くご紹介しました。
キタッラ パスタとは、ギターのような道具で作る断面が四角いパスタであり、そのもちもちとした力強い食感と、ソースがよく絡むざらついた表面が最大の魅力です。 伝統的な子羊のラグーソースから、魚介や野菜のソースまで、様々な味わいを受け止める懐の深さも持ち合わせています。
もしレストランのメニューで「キタッラ」を見かけたら、ぜひその独特の食感を試してみてください。また、専用の道具を手に入れて、ご家庭で手打ちに挑戦してみるのも、食の楽しみを広げる素晴らしい体験になるでしょう。この記事が、あなたのパスタの世界をより豊かにする一助となれば幸いです。
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