「スップリ」という言葉を聞いたことはありますか? もしかしたら、イタリア料理店のメニューで見かけたことがあるかもしれません。スップリは、イタリアのローマが誇る、美味しくて楽しいストリートフードです。 見た目は日本のコロッケに似ていますが、その中には驚きと美味しさが詰まっています。
この記事では、そんなスップリの魅力に迫ります。スップリとは一体どんな料理なのか、その歴史や名前の由来、よく似た料理であるアランチーニとの違い、そして家庭で楽しめる本格的なレシピまで、わかりやすくご紹介します。この記事を読めば、あなたもきっとスップリの虜になるはず。さあ、一緒にローマの味を巡る旅に出かけましょう。
スップリの正体とは?ローマ生まれのライスコロッケ
スップリは、イタリアの首都ローマで古くから愛されている名物料理です。 日本でいうライスコロッケのようなもので、ローマっ子にとっては欠かせないストリートフードの一つと言えるでしょう。 ピッツェリア(ピザ屋)の前菜として、あるいは街角の惣菜店で気軽に買って楽しむのが定番のスタイルです。
スップリの基本的な定義
スップリは、トマトソースで炊いたお米(リゾット)でモッツァレラチーズを包み、衣をつけて揚げた料理です。 熱々のスップリを二つに割ると、中から溶けたモッツァレラチーズがとろーりと伸びるのが最大の特徴です。 この見た目の楽しさと、トマトライスの酸味、そしてチーズのコクが見事に調和した美味しさが、多くの人々を魅了してやみません。基本的には、牛ひき肉や鶏のレバーなどを加えたラグーソースのリゾットが使われることが多いですが、家庭や店によって様々なバリエーションが存在します。
スップリの名前の面白い由来
「スップリ」という少し変わった名前の由来には、面白い説があります。最も有力なのは、フランス語の「Surprise(シュルプリーズ)」、つまり「驚き」という言葉が語源だという説です。 19世紀にローマがフランスの影響下にあった時代、この料理を食べたフランス人が、中から出てくるチーズの伸びに驚いて「シュルプリーズ!」と叫んだことが、ローマ訛りで「スップリ」になったと言われています。
また、スップリは別名「スップリ・アル・テレーフォノ(Supplì al telefono)」とも呼ばれます。 これはイタリア語で「電話のスップリ」という意味です。 二つに割った時にチーズが糸を引く様子が、昔の電話機のコードのように見えることから、このユニークな愛称が付けられました。 この名前からも、スップリが単なる食べ物としてだけでなく、人々の生活に根付いた文化的な存在であることがうかがえます。
スップリの歴史とローマでの位置づけ
スップリの起源は、余り物のリゾットを美味しく再利用するための料理だったと言われています。 そのため、もともとは鶏のレバーなど、安価な部位が使われることも多かったようです。 やがてその美味しさが評判を呼び、ローマの庶民の味として定着していきました。
現在では、ローマを訪れる観光客にも人気のグルメの一つとなっています。 しかし、何よりもスップリはローマに住む人々にとってのソウルフードです。 小腹が空いた時のおやつや、友人との気軽な食事の始まりなど、日常の様々な場面で楽しまれています。老舗のピッツェリアからモダンな惣菜店まで、多くのお店が自慢のスップリを提供しており、その味を競い合っています。
スップリとアランチーニ、似ているようで違う二つの料理
イタリアにはスップリとよく似たライスコロッケ、「アランチーニ」があります。 どちらも美味しいお米の揚げ物ですが、実はいくつかの違いがあります。これらの違いを知ることで、イタリア料理の奥深さをより一層感じることができるでしょう。
見た目と形状の違い
最も分かりやすい違いは、その形です。ローマ名物のスップリは、俵型や楕円形をしているのが一般的です。 これは日本の一般的なコロッケにも似た形で、手で持って食べやすいようになっています。
一方、シチリア島発祥のアランチーニは、「小さなオレンジ」という名前の通り、丸い形が基本です。 地域によっては、円錐形など他の形も見られます。大きさもスップリより大きいものが多く、拳ほどのサイズのアランチーニも珍しくありません。
主な材料と味付けの違い
中身の味付けにも違いが見られます。スップリは、トマトソースで味付けしたリゾットをベースにするのが伝統的です。 中に入れるチーズは、よく伸びるモッツァレラチーズが定番です。
対してアランチーニは、サフランで色付けしたリゾットや、トマトソース、ミートソースなど、バリエーションが豊かです。 中に入れる具材も、ひき肉やグリーンピース、様々な種類のチーズ(パルミジャーノやカチョカヴァッロなど)が使われます。 つまり、スップリが「トマト味のリゾットとモッツァレラ」という比較的シンプルな組み合わせなのに対し、アランチーニはより多様な味のバリエーションが存在すると言えるでしょう。
発祥地の違い
この二つの料理は、生まれた場所も異なります。スップリは、前述の通りイタリアの首都ローマが発祥の郷土料理です。 ローマの食文化に深く根付いており、地元の人々に愛され続けています。
一方、アランチーニは、地中海に浮かぶ美しい島、シチリア島で生まれました。 アラブ人による支配の影響で米食文化が伝わったことが起源とされており、シチリアの食文化を代表する一品です。 現在では、ナポリなど南イタリアの他の地域でも広く食べられています。 このように、スップリとアランチーニは、それぞれ異なる地域の歴史と文化を背景に持つ、兄弟のような関係の料理なのです。
家庭で挑戦!美味しいスップリの作り方
ローマの味、スップリをぜひご家庭でも作ってみませんか?少し手間はかかりますが、揚げたて熱々の美味しさは格別です。ここでは、基本的なスップリの作り方をご紹介します。
基本的な材料
本格的なスップリを作るための基本的な材料は以下の通りです。お店や家庭によって少しずつ異なりますので、お好みでアレンジしてみてください。
・お米:イタリア米(カルナローリ、アルボリオなど)が理想ですが、日本のお米でも代用可能です。
・トマトソース(またはトマト缶):味のベースとなります。
・玉ねぎ、人参、セロリ:香味野菜として、みじん切りにして使います。
・牛ひき肉:コクと旨味を加えます。鶏レバーや生ハムを加えるレシピもあります。
・白ワイン:風味付けに使います。
・ブイヨン(またはコンソメ):リゾットを炊く際に使用します。
・モッツァレラチーズ:スップリの心臓部。塊のものをサイコロ状に切って使います。
・パルミジャーノ・レッジャーノ:リゾットに混ぜ込み、風味を豊かにします。
・卵、小麦粉、パン粉:衣用です。
・揚げ油:たっぷりと用意しましょう。
・オリーブオイル、塩、胡椒:調味料として適量使用します。
調理の手順:リゾット作りから成形まで
美味しいスップリ作りの工程は、大きく分けてリゾット作り、成形、揚げるという3つのステップになります。
1. リゾットを作る:鍋にオリーブオイルを熱し、みじん切りにした香味野菜をよく炒めます。 次に牛ひき肉を加えて炒め、白ワインを加えてアルコールを飛ばします。 トマトソースを加えて少し煮詰めたら、お米を加えて炒め合わせます。
2. リゾットを炊く:温めたブイヨンを数回に分けて加えながら、お米がアルデンテ(少し芯が残る状態)になるまで炊き上げます。 最後にパルミジャーノ・レッジャーノを混ぜ込み、塩胡椒で味を調えます。出来上がったリゾットは、バットなどに広げて完全に冷まします。 これが、後で成形しやすくするための重要なポイントです。
3. 成形する:冷めたリゾットを適量手に取り、手のひらで広げます。 中央にサイコロ状にカットしたモッツァレラチーズを置き、チーズがはみ出ないように俵型に包み込みます。
4. 衣をつける:成形したスップリに、小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣をつけます。
上手に揚げるコツとポイント
最後の仕上げ、揚げる工程にも美味しく作るためのコツがあります。
・油の温度:油は180〜190℃の高温に熱します。 温度が低いと衣が油を吸いすぎてしまい、べちゃっとした仕上がりになってしまいます。
・揚げる時間:高温の油で、表面がきつね色になるまで短時間でさっと揚げます。 中のリゾットには既に火が通っているので、衣をカリッとさせ、中のチーズを溶かすのが目的です。
・一度にたくさん入れすぎない:一度にたくさんのスップリを鍋に入れると、油の温度が急激に下がってしまいます。 少しずつ、余裕をもって揚げるようにしましょう。
・油を切る:揚がったスップリは、キッチンペーパーなどの上でしっかりと油を切ります。 これで余分な油が落ち、カリッとした食感が保てます。
揚げたてのスップリを二つに割れば、中からとろーりチーズが!この瞬間は、作った人だけの特権です。ぜひ挑戦してみてください。
もっと知りたい!スップリの様々なバリエーション
伝統的なトマトとモッツァレラチーズのスップリは絶品ですが、ローマでは様々なバリエーションのスップリも楽しまれています。ここでは、定番以外の具材や、少し変わったスップリ、そして日本でスップリを味わえるお店についてご紹介します。
定番以外の具材とは?
ローマのピッツェリアや惣菜店では、伝統的なスップリに加えて、独創的なスップリを見つけることができます。例えば、以下のようなバリエーションがあります。
・カチョ・エ・ペペ:ローマ名物のパスタ「カチョ・エ・ペペ」をリゾットで再現したスップリ。ペコリーノチーズと黒胡椒のスパイシーな風味が特徴です。
・アマトリチャーナ:こちらもローマ名物パスタ「アマトリチャーナ」風。グアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)の旨味とトマトソース、ペコリーノチーズの組み合わせが楽しめます。
・ンドゥイヤ:カラブリア州名産の、唐辛子を練り込んだスパイシーなサラミ「ンドゥイヤ」を入れたスップリ。ピリ辛好きにはたまりません。
・シーフード:イカ墨のリゾットを使ったり、エビや貝類を入れたりするシーフードのスップリも人気です。
これらの他にも、季節の野菜を使ったものや、様々な種類のチーズを組み合わせたものなど、お店によって個性豊かなスップリが日々生まれています。
お米の代わりにパスタを使ったスップリ
最近のローマでは、お米の代わりに細かく折ったパスタを使って作る「パスタのスップリ」も人気を集めています。 お米とはまた違った、もちもちとした食感が特徴で、こちらも様々な味付けで提供されています。
例えば、カルボナーラソースやトマトソースで和えたパスタを丸めて揚げるなど、パスタ料理のアイデアがそのままスップリに応用されています。残ったパスタをリメイクするアイデアから生まれたのかもしれませんが、今では一つのジャンルとして確立しつつあります。 もしローマを訪れる機会があれば、伝統的なお米のスップリと、この新しいパスタのスップリを食べ比べてみるのも面白いでしょう。
日本でスップリが食べられるお店
日本でも、本格的なスップリを提供するイタリア料理店が増えてきました。特に、ローマ料理を専門とするレストランや、カジュアルなイタリアンバール、ピッツェリアなどで見つけることができます。
東京都内には、ローマ出身のシェフが腕を振るうお店や、現地の味を忠実に再現しているお店が点在しています。 また、最近では福岡の天神にスップリのテイクアウト専門店が登場するなど、より気軽に楽しめる場所も増えてきているようです。
お近くのイタリア料理店のメニューをチェックしてみたり、「スップリ 東京」や「スップリ 食べられる店」といったキーワードでインターネット検索してみたりすると、美味しいスップリに出会えるかもしれません。 ぜひ、日本で本場のローマの味を探してみてください。
まとめ:スップリの魅力を再発見
この記事では、ローマ名物のライスコロッケ「スップリ」について、その基本情報から歴史、アランチーニとの違い、家庭での作り方、そして様々なバリエーションまでを詳しくご紹介しました。
スップリは、トマト風味のご飯ととろけるモッツァレラチーズが絶妙にマッチした、シンプルながらも奥深い味わいの料理です。 その名前の由来がフランス語の「驚き」であることや、「電話」という愛称で呼ばれることなど、食文化の背景にあるストーリーも非常に興味深いものでした。 また、シチリアのアランチーニとの形状や材料の違いを知ることで、イタリア各地方の食の個性を感じ取ることができたのではないでしょうか。
ご家庭で手作りするレシピもご紹介しましたが、揚げたての熱々を頬張る喜びは格別です。 少し手間をかけてでも、挑戦してみる価値は十分にあります。もちろん、日本にある本格的なイタリア料理店で、シェフこだわりのスップリを味わうのも素晴らしい体験です。 この記事をきっかけに、スップリという美味しくて楽しいローマのストリートフードに、より一層の興味を持っていただけたなら幸いです。
コメント