パスタと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、細長い棒状のスパゲッティかもしれません。しかし、パスタの世界は実に奥深く、500種類以上も存在すると言われています。 中でも、もちもちとした食感とソースの絡みやすさで人気なのが、きしめんのように平たい形状のパスタです。
フェットチーネやリングイネといった名前は聞いたことがあっても、「それぞれの違いがよくわからない」「どんなソースを合わせたらいいか迷ってしまう」という方も多いのではないでしょうか。平たいパスタは、その幅や厚み、形状によって得意なソースが異なり、使い分けることでいつものパスタ料理が格段に美味しくなります。
この記事では、代表的な平たいパスタの種類とその特徴を、初心者の方にもわかりやすく解説します。さらに、それぞれのパスタにぴったりのソースや、おうちで簡単に作れる絶品レシピもご紹介。この記事を読めば、あなたも平たいパスタの魅力に気づき、日々の食卓がもっと豊かになるはずです。
パスタの種類、平たい麺にはどんなものがある?

平たいパスタと一括りに言っても、その種類はさまざまです。ここでは、スーパーなどでも比較的手に入りやすい代表的な平たいパスタを5種類ピックアップして、それぞれの特徴や名前の由来などを詳しくご紹介します。幅や厚みの違いを知ることで、料理に合わせた最適なパスタ選びができるようになりますよ。
フェットチーネ:クリームソースの王道
イタリア語の「fettuccia(小さなリボン、薄切り)」が語源で、その名の通りリボンのような形状をしています。 卵を練り込んだものが多く、もちもちとした食感と食べ応えが特徴です。
表面積が広いため、カルボナーラやアルフレッドソースといった濃厚なクリーム系のソースと相性抜群です。 ソースが麺によく絡み、一体感のある味わいを楽しめます。イタリアの中部から南部でよく食べられており、特にローマの名物料理として知られています。 乾麺も手に入りやすいですが、生パスタならではのもちもち感を味わうのもおすすめです。そのボリューム感から、メインディッシュとしても満足度の高い一皿を作ることができます。
タリアテッレ:フェットチーネとの違いは?
その違いは主に幅と厚み、そして発祥地域にあります。タリアテッレの幅は約5mm前後で、フェットチーнеよりも少し細めです。 イタリア語の「tagliare(切る)」が語源で、パスタ生地を薄くのばして包丁で切って作られていたことに由来します。
主にイタリアの中部から北部、特に美食の都として知られるボローニャ地方で親しまれているパスタです。 本場のボロネーゼ(ラグー・アッラ・ボロネーゼ)は、このタリアテッレを使って作られるのが正式とされています。 フェットチーネと同様に卵を使った生地が多いですが、より薄く繊細な食感を持つものもあります。ひき肉を煮込んだ濃厚なミートソース(ラグーソース)との組み合わせは、まさに鉄板です。
| パスタの種類 | 幅の目安 | 主な地域 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| フェットチーネ | 約8mm前後 | イタリア中部~南部 | もちもちと弾力のある食感 |
| タリアテッレ | 約5mm前後 | イタリア中部~北部 | シコシコとした歯ごたえ |
実は、両者には明確な基準がなく、イタリア人でも判別が難しいと言われることもあるようです。 メーカーやお店によっても定義が異なる場合があるため、大まかな傾向として覚えておくと良いでしょう。
リングイネ:断面が楕円形の万能パスタ
幅は約3mm前後で、フェットチーネやタリアテッレよりは細身です。 イタリア語の「lingua(舌)」が由来で、「小さな舌」という意味を持ちます。
この独特の形状がポイントで、スパゲッティのような軽やかさと、平打ち麺のソースの絡みやすさを両立しています。 そのため、オイルベース、トマトソース、クリームソース、ジェノベーゼなど、幅広いソースに合わせやすいのが魅力です。 特に、魚介系の旨味が詰まったペスカトーレや、バジルの香り豊かなジェノベーゼソースとの相性は格別です。 もちっとした弾力のある食感も特徴で、しっかりとした食べ応えも感じられます。 イタリア北西部のリグーリア州発祥のパスタで、同じくリグーリア州が発祥のジェノベーゼソースと合わせるのは、現地の定番の組み合わせです。
パッパルデッレ:幅広で存在感抜群!
その幅は10mmから30mmほどもあり、存在感は圧倒的です。 名前はトスカーナ地方の方言「pappare(豪快に食べる、食いしん坊)」に由来すると言われており、その名の通り食べ応え満点のパスタです。
この幅広の麺は、ソースをたっぷりと受け止めることができます。そのため、イノシシや野ウサギなどのジビエ(野生鳥獣の肉)を使った濃厚な煮込みソースや、ゴルゴンゾーラチーズを使ったこってりとしたクリームソースなど、力強い味わいのソースと合わせるのが伝統的な食べ方です。 もちもちとした食感と小麦の風味を存分に味わえるため、ソースに負けない存在感を放ちます。 おもてなし料理に使えば、その見た目のインパクトで食卓が華やかになること間違いなしです。
ラザニア:重ねて焼くシート状パスタ
このパスタそのものの名前が「ラザニア」であり、同時にミートソースやホワイトソース(ベシャメルソース)、チーズを重ねてオーブンで焼き上げた料理名としても知られています。
ラザニアの起源は古く、古代ローマ時代にまで遡るとも言われています。平たい形状なので、ソースや具材との一体感を最も楽しめるパスタと言えるでしょう。ミートソースとホワイトソースを交互に重ねていくのが定番ですが、ほうれん草やカボチャなどの野菜を加えたり、様々なアレンジが可能です。 市販されているラザニアには、下茹でが必要なタイプと不要なタイプがあるので、パッケージの表示を確認してから使うようにしましょう。 パーティー料理としても人気が高く、熱々を取り分ける楽しさも魅力の一つです。
なぜソースとよく絡む?平たいパスタの魅力

平たいパスタが多くの人に愛されるのには、その形状ならではの理由があります。スパゲッティなどの丸い麺とは一味違う、平たいパスタならではの魅力を3つのポイントから解説します。この魅力を知れば、きっとあなたも平たいパスタを使ってみたくなるはずです。
表面積の広さが美味しさの秘密
平たいパスタの最大の魅力は、なんといってもソースとの絡みの良さです。 スパゲッティのような円形の麺に比べて表面積が広いため、ソースをたっぷりと麺にまとわせることができます。 これにより、パスタとソースが一体となり、口に入れた瞬間に濃厚な味わいが広がります。
特にクリームソースやラグーソースのような、とろみのある濃厚なソースは、平たい麺の表面にしっかりと留まります。ソースを余すことなく味わえるため、料理全体の満足度が格段にアップするのです。パスタを食べているのか、ソースを食べているのか分からなくなるほどの一体感は、平たいパスタならではの体験と言えるでしょう。ソースの味を存分に楽しみたい時には、ぜひ平たいパスタを選んでみてください。
もちもち食感と食べ応え
平たいパスタの多くは、もちもちとした独特の食感を持っています。 特に、卵を練り込んで作られることが多いフェットチーネやタリアテッレは、弾力があり、しっかりとした歯ごたえを楽しむことができます。 この食感は、日本の「きしめん」や「ほうとう」にも通じるものがあり、日本人にとって親しみやすいと感じる方も多いかもしれません。
また、幅が広く厚みがあるため、少量でも満足感が得やすいのも嬉しいポイントです。パッパルデッレのように幅の広いパスタになれば、その食べ応えはさらに増します。 しっかりと食事をとりたい時や、育ち盛りのお子さんがいるご家庭にもぴったりです。噛むほどに小麦の風味を感じられるのも、平たいパスタの魅力の一つです。
見た目の華やかさでおもてなしにも
平たいパスタは、盛り付けた時の見た目が非常に華やかです。リボンのような形状のフェットチーネやタリアテッレは、お皿の上で立体感を出しやすく、レストランで出てくるような一皿を演出しやすいのが特徴です。
例えば、くるくるとフォークで巻いて高さを出すように盛り付け、中央にソースをかけ、仕上げにハーブを添えるだけで、ぐっと洗練された印象になります。幅広のパッパルデッレを使えば、さらに豪華でインパクトのある見た目に。また、ラザニアは断面の層が美しく、カットして提供するスタイルがパーティーシーンにぴったりです。いつものパスタを平たい麺に変えるだけで、食卓がパッと明るくなり、特別感を演出できるため、記念日やおもてなしの際にも大活躍してくれます。
【種類別】平たいパスタと相性抜群のソース
平たいパスタの魅力を最大限に引き出すには、ソース選びが非常に重要です。ここでは、これまで紹介してきた平たいパスタの種類ごとに、特に相性の良いソースの系統を解説します。この組み合わせを知ることで、お店で食べるような本格的な味わいをおうちで再現できますよ。
濃厚クリームソース系との組み合わせ
麺の表面積が広いため、生クリームやチーズをたっぷり使ったこってりとしたソースをしっかりと受け止め、クリーミーな味わいを余すことなく堪能できます。
代表的なのは、卵とチーズのコクがたまらないカルボナーラや、バターとパルメザンチーズで作るシンプルなアルフレッドソースです。 また、サーモンやきのこを使ったクリームソースも定番で、麺のもちもちとした食感とソースの濃厚さが絶妙にマッチします。 幅が最も広いパッパルデッレであれば、ゴルゴンゾーラなどの青カビチーズを使った、さらにパンチの効いたクリームソースと合わせるのもおすすめです。平たい麺がソースの重さに負けず、バランスの取れた一皿に仕上がります。
旨味たっぷりミートソース(ラグーソース)系
特に、タリアテッレとボロネーゼ(ラグー・アッラ・ボロネーゼ)の組み合わせは、発祥の地ボローニャで愛される伝統的な組み合わせです。
幅広の麺が、肉の旨味が溶け込んだソースと具材をたっぷりと絡め取り、一口ごとに深い味わいを楽しめます。フェットチーネや、さらに幅広のパッパルデッレも同様にラグーソースとよく合います。 パッパルデッレには、イノシシや鴨肉などを使った、より野性味あふれる濃厚な煮込みソースを合わせるのが本場流です。 平たい麺のしっかりとした食べ応えと、肉のゴロゴロ感が一体となり、満足度の高い一皿が完成します。
魚介の風味を活かすオイル・トマトソース系
アサリやムール貝などの貝類から出る旨味たっぷりのスープを、リングイネの平たい面がうまく吸い上げてくれます。
エビやイカ、貝類がたっぷり入ったペスカトーレは、トマトベースでもオイルベース(ビアンコ)でも、リングイネとの相性は抜群です。 また、バジルの爽やかな香りが特徴のジェノベーゼソースも、リングイнеと合わせるのが伝統的なスタイルです。 ソースが麺にしっかりと絡みつつも、クリームソースほど重たくならず、魚介やハーブの繊細な風味を存分に活かすことができます。もちっとしたリングイネの食感が、プリっとした魚介の食感とも良いコントラストを生み出します。
おうちで挑戦!平たいパスタの絶品レシピ

それぞれのパスタとソースの相性がわかったところで、実際におうちで楽しめる簡単レシピをご紹介します。いつものパスタを平たい麺に変えるだけで、本格的な味わいに仕上がりますよ。ぜひ、週末のランチやディナーに試してみてください。
フェットチーネで作る濃厚カルボナーラ
生クリームを使わずに、卵とチーズのコクを存分に味わう本場ローマ風のカルボナーラです。もちもちのフェットチーネに濃厚なソースが絡み、絶品です。
材料(1人分)
- フェットチーネ:80〜100g
- パンチェッタ(または厚切りベーコン):40g
- 卵黄:2個
- ペコリーノ・ロマーノ(またはパルミジャーノ・レッジャーノ):大さじ3
- 黒胡椒:たっぷり
- オリーブオイル:大さじ1
- 塩:適量
作り方
- パンチェッタは5mm幅の拍子木切りにします。ボウルに卵黄、すりおろしたチーズ、たっぷりの黒胡椒を入れてよく混ぜ合わせておきます。
- 鍋にたっぷりのお湯を沸かし、塩(お湯1Lに対し塩10gが目安)を入れ、フェットチーネを袋の表示時間通りに茹で始めます。
- フライパンにオリーブオイルとパンチェッタを入れ、弱火でじっくりと炒めます。カリカリになったら火を止めます。
- 茹で上がったフェットチーネをフライパンに移し、パンチェッタの脂とよく和えます。この時、パスタの茹で汁をお玉1杯分ほど加えて混ぜ、ソースが固まりすぎないようにします(乳化)。
- フライパンの粗熱が少し取れたら、1の卵液を一気に加えて素早く混ぜ合わせます。余熱で卵に火が通り、とろりとしたソースになれば完成です。
- お皿に盛り付け、仕上げにさらにチーズと黒胡椒をかければ、お店のような一皿に。
タリアテッレで楽しむボロネーゼ
香味野菜と赤ワインでじっくり煮込んだ、旨味たっぷりの本格ボロネーゼです。タリアテッレとの相性は言うまでもありません。
材料(2人分)
- タリアテッレ:160g
- 合い挽き肉:200g
- 玉ねぎ:1/2個
- にんじん:1/3本
- セロリ:1/3本
- にんにく:1かけ
- トマト缶(カット):1缶(400g)
- 赤ワイン:100ml
- オリーブオイル:大さじ2
- 固形コンソメ:1個
- 塩、こしょう:少々
- パルミジャーノ・レッジャーノ:お好みで
作り方
- 玉ねぎ、にんじん、セロリ、にんにくはすべてみじん切りにします。
- 鍋にオリーブオイルとにんにくを入れて弱火で熱し、香りが出てきたら野菜をすべて加えて中火でじっくり炒めます。玉ねぎがしんなりするまで炒めるのがポイントです。
- 合い挽き肉を加えて炒め、肉の色が変わったら赤ワインを注ぎ、アルコールを飛ばしながら煮詰めます。
- トマト缶、固形コンソメを加え、時々混ぜながら弱火で20〜30分ほど煮込みます。水分が飛び、ソースにとろみがついたら塩、こしょうで味を調えます。
- 別の鍋でタリアテッレを茹で、茹で上がったら水気を切ってソースの鍋に加え、手早く和えます。
- お皿に盛り付け、お好みでパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりとかけてお召し上がりください。
リングイネの本格ペスカトーレ・ビアンコ
魚介の旨味が凝縮された、オイルベースのペスカトーレです。「ビアンコ」とはイタリア語で「白」を意味し、トマトを使わないソースのことを指します。リングイネのもちもち食感がたまりません。
材料(1人分)
- リングイネ:80〜100g
- お好みの魚介類(アサリ、エビ、イカなど):合わせて150g程度
- ミニトマト:4〜5個
- にんにく:1かけ
- 鷹の爪:1本
- 白ワイン:50ml
- オリーブオイル:大さじ2
- イタリアンパセリ:適量
- 塩、こしょう:少々
作り方
- アサリは砂抜きしておきます。エビは殻と背わたを取り、イカは輪切りにします。にんにくはみじん切り、鷹の爪は種を取り除きます。ミニトマトは半分にカットし、イタリアンパセリはみじん切りにします。
- リングイネを茹で始めます。袋の表示時間より1分ほど短く茹でるのがポイントです。
- フライパンにオリーブオイル、にんにく、鷹の爪を入れて弱火にかけ、香りをじっくりと引き出します。
- 香りが立ったら魚介類とミニトマトを加えて中火で炒め、白ワインを加えて蓋をし、アサリの口が開くまで蒸し煮にします。
- 茹で上がったリングイネと、その茹で汁をお玉1杯分フライパンに加え、ソースとよく混ぜ合わせながら加熱します(乳化)。塩、こしょうで味を調えます。
- 火を止める直前にイタリアンパセリを加えてさっと混ぜ、お皿に盛り付ければ完成です。
まとめ:パスタの種類を理解して、平たい麺で食卓を豊かに

今回は、フェットチーネ、タリアテッレ、リングイネ、パッパルデッレ、ラザニアといった代表的な平たいパスタの種類と、それぞれの特徴、そして相性の良いソースについて詳しく解説しました。
平たいパスタは、その形状からソースとよく絡み、もちもちとした食感と食べ応えが魅力です。濃厚なクリームソースやミートソースには幅広のフェットチーネやタリアテッレを、魚介の風味を活かしたソースには断面が楕円形のリングイネを選ぶなど、ソースによってパスタを使い分けることで、いつもの料理がワンランクアップします。
この記事で紹介したレシピを参考に、ぜひおうちで様々な平たいパスタを楽しんでみてください。きっと、パスタの世界の奥深さと新たな美味しさに出会えるはずです。



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