レストランでいただく美味しい洋食のコース料理。その中で、意外と「どう飲むのが正解?」と戸惑ってしまうのがスープではないでしょうか。音を立ててしまわないか、スプーンの使い方は合っているか、少なくなってきたらどうしよう…など、気になる点はたくさんありますよね。
この記事では、そんな洋食スープの飲み方に関するマナーを、初心者の方にも分かりやすく、やさしく解説します。基本的なスプーンの使い方から、スープが少なくなってきたときの美しいいただき方、器の種類による違い、そして意外と知られていないNGマナーまで、幅広くご紹介します。
この機会にスマートなスープの飲み方をマスターして、どんなシーンでも自信を持って食事を楽しめるようになりましょう。テーブルマナーは、自分自身が心地よく食事をするためだけでなく、周りの人への配慮でもあります。 正しい知識を身につけて、より豊かな食事の時間を過ごしてくださいね。
洋食スープの基本的な飲み方とマナー

スプーンの正しい持ち方
まず基本となるのが、スプーンの持ち方です。ナイフやフォークと同じように、ペンを持つような感覚で持つのが正解です。 親指と人差し指で柄の中ほどを支え、中指を添えると安定します。柄の端のほうを持ちすぎたり、逆にスープをすくう部分に近すぎたりすると、不安定になり美しく見えません。
また、食事中は背筋を伸ばし、前かがみにならないように意識しましょう。 スープを口に運ぶ際に、お皿に顔を近づけていくのではなく、スプーンを口元まで持ってくるのがエレガントに見せるポイントです。 この姿勢を保つためにも、スプーンの安定した持ち方はとても重要になります。
スープをいただく際は、器自体を持ち上げることは基本的にしません。 左手は軽くスープ皿の縁に添えておくと、より安定し、美しい所作に見えます。
スプーンですくう向きと口への運び方
スプーンでスープをすくう向きには、実はイギリス式とフランス式の2つのスタイルがあります。
| スタイル | すくう向き | 特徴 |
|---|---|---|
| イギリス式 | 手前から奥へ | 日本ではこちらが一般的とされています。奥に向かってすくうことで、スープが向こう側へ飛ぶのを防ぐ意味合いがあります。 |
| フランス式 | 奥から手前へ | 奥から手前にすくう方法です。 こちらも正式なマナーの一つです。 |
厳密な決まりはなく、どちらのスタイルでも間違いではありません。 迷った場合は、より一般的とされる手前から奥へすくうイギリス式を覚えておくと安心でしょう。
スープをすくう量は、スプーンの7~8分目程度が適量です。 なみなみとすくうと、口に運ぶまでにこぼれやすくなってしまいます。 そして、すくったスプーンをそのまま口の中に入れるのではなく、スプーンの縁に口をつけ、スープを静かに流し込むようにしていただきましょう。 スプーンの先から飲んでも、横から飲んでも、やりやすい方法で構いません。
音を立てずに飲むためのコツ
スープを飲む際に最も気をつけたいのが、「音を立てない」ということです。 日本の麺類のように「ズズーッ」とすするのは、洋食のマナーでは最も品のない行為とされています。 音を立てずに飲むためには、前述の通り、スープを「吸う」のではなく、口の中に「流し込む」という意識が大切です。
また、スプーンとお皿が当たって「カチャカチャ」という音を立てないようにする配慮も必要です。 スープをすくう際は、スプーンを強くお皿に押し付けず、優しく滑らせるように動かしましょう。
スープが少なくなってきた時の対応
美味しいスープをいただいていると、だんだん量が少なくなってきてスプーンですくいにくくなりますよね。そんな時、どうすれば最後まで美しくいただけるのでしょうか。ここでは、スープが残りわずかになった際のスマートな対応方法を解説します。
スープ皿を傾けるのはOK?正しい傾け方
スープが少なくなってきたら、お皿を傾けてスープを集めても問題ありません。 ただし、傾け方には正しいマナーがあります。
左手の指先で、お皿の「手前」をそっと持ち上げ、奥側へ傾けるのが正解です。 こうすることで、スープがお皿の奥に集まり、すくいやすくなります。
なぜ奥へ傾けるのかというと、お皿の裏側、つまり底の部分を向かい側の人に見せないようにするためです。 手前に傾けてしまうと、お皿の底が相手に見えてしまい、あまり美しい所作とは言えません。
ただし、あまりにも大きく傾けすぎると、かえって品がなく見えてしまうこともあります。 あくまでも軽く持ち上げる程度にとどめ、スマートに行いましょう。指1本分くらい傾けるのが目安です。
最後の一口まで美しくいただく方法
お皿を傾けてスープを集めても、どうしてもスプーンですくえない量が残ってしまうことがあります。この場合、無理に最後まで飲み干そうとする必要はありません。
スプーンでカチャカチャと音を立ててかき集める行為は、マナー違反とされています。 スプーンですくえなくなった時点で、食事を終えるのがスマートな振る舞いです。食事を残すのは基本的にマナー違反ですが、この場合は例外と考えてよいでしょう。
「一番美味しい部分だけをスマートにいただく」という意識を持つと、最後の深追いをせずに済みます。 エレガントな食事の締めくくりを心がけましょう。
スープ皿に残った具材の扱い方
スープに浮かんでいるクルトン(パンをサイコロ状に切って揚げたもの)やパセリなどの「浮き身」も、スープと一緒にいただきます。
スープが少なくなって、具材だけがお皿に残ってしまった場合も、無理に追いかける必要はありません。スプーンですくえる範囲でいただき、残りはそのままにしておきましょう。
特に、パンをスープに浸して残ったスープや具材をきれいにする、という行為はマナー違反とされていますので注意が必要です。 パンとスープの正しいいただき方については、後の章で詳しく解説します。
容器別のスープの飲み方
洋食のスープは、様々な形の器で提供されます。平たいお皿タイプもあれば、取っ手のついたカップタイプもあります。ここでは、代表的な容器別に、それぞれの飲み方のマナーやポイントをご紹介します。器の特徴を知ることで、よりスムーズに対応できるようになりますよ。
深皿タイプのスープ(ポタージュなど)
レストランで最も一般的に使われるのが、中央がくぼんだ深皿タイプのスープボウルです。 コーンポタージュやヴィシソワーズ(じゃがいもの冷製スープ)など、とろみのあるスープによく使われます。
このタイプの器では、これまで説明してきた基本的なマナーがそのまま適用されます。
- 器は持ち上げない
- スプーンを使っていただく
- 少なくなったら、お皿の手前を持ち上げて奥に傾ける
食事を終えたら、スプーンはお皿の中に置きます。 スプーンの柄が手前に来るように、自分に対して平行に、ボウルの部分を上向きにして置くのが一般的です。 こうすることで、給仕するスタッフが「食事が終わった」という合図として認識しやすくなります。
取っ手付きスープカップ(ブイヨンなど)
コンソメスープやブイヨンなど、澄んださらっとしたスープは、取っ手のついたカップで提供されることがあります。 このカップは「ブイヨンカップ」とも呼ばれ、両側に取っ手がついているのが特徴です。
取っ手付きカップの場合、飲み方にはいくつかのポイントがあります。
- 最初はスプーンでいただく: まずはスプーンで数回、スープをいただきます。 具材が入っている場合は、スプーンで先にいただきましょう。
- 量が少なくなったら直接飲んでもOK: スープの量が少なくなってきたら、カップに直接口をつけて飲んでもマナー違反ではありません。
- 両側に取っ手がある場合:両手で取っ手を持ち、紅茶やコーヒーを飲むようにいただきます。
- 片側に取っ手がある場合:片手で取っ手を持っていただきます。
ただし、フォーマルな席では、最後までスプーンを使っていただく方がより丁寧な印象になります。 カジュアルなレストランや親しい間柄での食事であれば直接口をつけても問題ありませんが、場の雰囲気に合わせることが大切です。
食後は、スプーンを受け皿(ソーサー)の手前側、もしくはカップの向こう側に置きます。 カップの中にスプーンを置くのは、「まだ食事中」という合図になってしまうことがあるので注意しましょう。
取っ手のないスープボウル
カフェやカジュアルなレストランでは、日本の食卓でもおなじみの、取っ手のない小ぶりなボウルでスープが提供されることもあります。この場合も、基本的には深皿タイプと同じように、スプーンを使っていただきます。
器が小さいからといって、和食のお味噌汁のようにお椀を持ち上げて口をつけて飲むのはマナー違反です。必ずテーブルに置いたまま、スプーンで口に運びましょう。
ただし、お店の雰囲気や一緒にいる相手との関係性によっては、ある程度カジュアルないただき方が許容される場合もあります。とはいえ、基本は「器は持ち上げず、スプーンでいただく」と覚えておけば、どんなお店でも恥ずかしい思いをすることはないでしょう。
スープと一緒にパンをいただく時のマナー

コース料理では、スープとほぼ同じタイミングでパンが提供されることがよくあります。 このパンをどのようにいただくかにも、いくつかのマナーが存在します。美味しいスープとパンを、よりスマートに楽しむためのポイントを見ていきましょう。
パンをスープに浸して食べるのはマナー違反?
家庭では、パンをスープに浸して食べるのはとても美味しいものですが、レストランなどフォーマルな場では基本的にマナー違反とされています。
メインディッシュのソースが残った際に、パンで拭っていただくのは「ソースが美味しい」という意思表示になり許容されることもありますが、スープの場合は別です。 スープ皿が汚れて見えたり、パンくずがスープに落ちてしまったりと、見た目にも美しくないため避けましょう。
ただし、非常にカジュアルなレストランや気心の知れた相手との食事であれば、大目に見られることもあります。 小さくちぎったパンをスープに落とし、それをスプーンですくって食べるという方法であれば、マナー違反にはならないという見解もあります。 しかし、基本的にはスープとパンは別々にいただくものと覚えておきましょう。
パンとスープを交互に食べるタイミング
パンはいつから食べ始めて良いのか、迷う方も多いかもしれません。基本的には、スープを飲み終わってから、次のメイン料理(魚料理など)と一緒にいただくのが一般的です。 パンは、お料理のソースを楽しんだり、口直しをしたりするためのもの、と考えると良いでしょう。
とはいえ、お店によっては「焼き立てです」と温かいパンを勧めてくれることもあります。その場合は、我慢せずに温かいうちにいただいても構いません。
パンを食べる際は、必ず一口サイズにちぎってから口に運びます。 大きなパンにそのままかぶりつくのは見栄えが良くないので避けましょう。バターを塗る際も、食べる分だけをその都度塗るのがスマートです。
パンくずがスープに入ってしまったら
丁寧に食べていても、パンくずがテーブルに落ちてしまうことはあります。これはマナー違反ではないので、気にする必要はありません。
しかし、意図せずパンくずがスープ皿に入ってしまった場合はどうでしょうか。その場合、特に焦る必要はありません。そのままスープと一緒にスプーンですくっていただきましょう。無理に取り除こうとすると、かえってスープをこぼしてしまったり、見苦しくなったりする可能性があります。
あくまで自然な振る舞いを心がけることが大切です。万が一の時でも慌てず、落ち着いて食事を続けましょう。
これだけは避けたい!スープのNGマナー
これまでスープの美しいいただき方について解説してきましたが、最後に「これだけはやってはいけない」という代表的なNGマナーを改めて確認しましょう。知らず知らずのうちにやってしまいがちな行動もあるかもしれません。これらのポイントを意識するだけで、食事の所作がぐっと洗練されます。
スプーンを舐める、噛む
食事を終えた後や、口に運んだ後のスプーンに残ったスープが気になって、スプーンを舐めてしまうのはNGです。 また、スプーンを口の中で噛んだり、カチャカチャと音を立てたりするのも避けましょう。
スプーンはあくまでスープを口に運ぶための道具です。口に運んだ後は、自然にスプーンを口から離しましょう。スプーンの先にスープが少し残っていても、気にせずそのままお皿に戻すのが正しい作法です。
スープを冷ますために息を吹きかける
先にも触れましたが、熱いスープを冷ますために「フーフー」と息を吹きかけるのはマナー違反です。 周囲に飛沫が飛んでしまう可能性があり、同席者に不快な思いをさせてしまいます。
熱いのが苦手な場合は、スプーンですくってから少し待つか、スープの表面をスプーンで静かに混ぜるなどして、自然に冷めるのを待ちましょう。 一度にすくう量を少なくするのも、熱さを和らげる工夫の一つです。
食事中のスプーンの置き場所
食事の途中で会話を楽しんだり、パンを食べたりするために、一時的にスプーンを置くことがあります。その際の置き場所にも注意が必要です。
食事の途中で手を休める場合は、スプーンをスープ皿の中に入れておきます。このとき、スプーンの柄を手前にして、皿の縁に立てかけるように置くと良いでしょう。受け皿があるカップの場合は、カップの向こう側に置くのが「食事休み」のサインになります。
食事が終わった際の合図は、前述の通り、スープ皿の中央に、柄を手前にして置くのが基本です。 このルールを知っておけば、スマートに食事を終えることができます。
まとめ:洋食スープの飲み方マナーをマスターして、食事をもっと楽しもう

この記事では、洋食のスープをいただく際の飲み方やマナーについて、基本的なポイントから応用まで幅広く解説しました。
- 基本は音を立てず、スプーンで「流し込む」ようにいただく
- スプーンは手前から奥へすくうのが一般的
- スープが少なくなったら、お皿の手前を持ち上げて奥に傾ける
- 取っ手付きカップは、量が減ったら直接口をつけても良い場合がある
- パンをスープに浸すのは基本的にNG
- 息を吹きかけて冷ます、スプーンを舐めるといった行為は避ける
テーブルマナーは、決して堅苦しいルールで自分を縛り付けるためのものではありません。 周りの人に不快感を与えず、自分自身も食事を心から楽しむための、大切な心配りです。
今回ご紹介したマナーを少し意識するだけで、レストランでの食事がより一層楽しく、自信に満ちたものになるはずです。ぜひ次の食事の機会に、スマートなスープのいただき方を実践してみてください。



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