ピザといえば、鮮やかなトマトソースがベースの「ロッソ」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、イタリアンレストランのメニューで「ピザ ビアンカ」という名前を見かけたことはありませんか?「ビアンカ」とはイタリア語で「白」を意味し、その名の通りトマトソースを使わずに作られる「白いピザ」のことです。チーズやオリーブオイル、そして具材そのものの風味をダイレクトに楽しめるのが最大の魅力で、素材本来の奥深い味わいに魅了される人が増えています。
この記事では、ピザ ビアンカの基本的な情報から、定番のロッソとの明確な違い、知れば知るほど食べたくなるその魅力、そしてご家庭で簡単に挑戦できる絶品レシピまで、ピザ ビアンカのすべてを分かりやすく、そして詳しくご紹介します。これを読めば、あなたもきっと白いピザの虜になるはずです。
そもそもピザのビアンカとは?
イタリア料理の奥深さを感じさせる「ピザ ビアンカ」。日本ではまだトマトソースのピザほど一般的ではありませんが、その本質を知ることで、ピザの世界がさらに広がります。ここでは、ピザ ビアンカの基本的な定義や名前の由来、そしてその成り立ちについて解説します。
「ビアンカ」の名前の由来と意味
「ピザ ビアンカ」の「ビアンカ(bianca)」とは、イタリア語で「白い」を意味する言葉です。 イタリア語には男性形と女性形があり、「ビアンカ」は女性単数形にあたります。 そのため、「ピザ ビアンカ(Pizza Bianca)」は直訳すると「白いピザ」となります。 この名前は、ピザの見た目が白いことに由来しています。私たちが普段よく目にする、トマトソースを使った赤いピザは「ピザ ロッソ(Pizza Rossa)」(ロッソは「赤い」の意味)と呼ばれ、ビアンカはこれと対をなす存在です。 シンプルに色で分類されていると考えると、とても分かりやすいですね。
ピザ ビアンカの基本的な特徴
ピザ ビアンカの最大の特徴は、なんといってもトマトソースを使用しないことです。 トマトソースの代わりに、生地に直接チーズや具材を乗せたり、オリーブオイルやクリームソースをベースにしたりして作られます。 これにより、トマトの酸味や強い風味に左右されることなく、モッツァレラチーズなどの乳製品のコクや、きのこや生ハムといった具材そのものの繊細な味わいを存分に楽しむことができるのです。イタリアのピッツェリア(ピザ専門店)では、メニューが「ロッソ」と「ビアンカ」の2つのカテゴリーに分けられていることも珍しくありません。
ピザ ビアンカの歴史と発祥
ピザ ビアンカの捉え方には、実は2種類あります。一つは、これまで説明してきた「トマトソースを使わない、具材を乗せたピザ」です。もう一つは、イタリア、特にローマで古くから親しまれている「何も乗せずに焼いたピザ生地」そのものを指す場合です。 こちらは、塩やローズマリーなどでシンプルに風味付けした生地を焼き上げ、フォカッチャのようにパンとして食べるスタイルです。 焼き立ての生地にオリーブオイルをつけたり、生ハムやチーズを挟んだりして、手軽なストリートフードとして楽しまれています。このシンプルな食文化が、やがて様々な具材を乗せる現在のピザ ビアンカへと発展していったと考えることができます。
ピザ ビアンカとロッソの決定的な違い
ピザの世界を代表する「ビアンカ」と「ロッソ」。この二つの違いは、単に「白い」か「赤い」かという見た目だけではありません。ベースとなるソースから味わいの方向性、そして適した具材まで、それぞれに異なる個性と魅力があります。ここでは、その決定的な違いを詳しく見ていきましょう。
ベースとなるソースの違い
最も根本的な違いは、ベースとなるソースにあります。 「ロッソ」はイタリア語で「赤」を意味し、その名の通り、完熟トマトを煮詰めて作ったトマトソースをベースにします。 このトマトソースが、ピザ全体の味の土台となり、豊かな酸味と旨味を与えます。誰もが「ピザ」と聞いて思い浮かべる、あのクラシックな味わいは、このトマトソースによって作られています。
一方、「ビアンカ」は「白」を意味し、トマトソースを一切使いません。 代わりに、生地に直接オリーブオイルを塗り、チーズや具材を乗せるのが基本スタイルです。 店舗やレシピによっては、生クリームやベシャメルソース(ホワイトソース)をベースにすることもあり、クリーミーでまろやかな味わいを楽しむこともできます。
味わいと風味の比較
ベースソースが違うため、当然ながら味わいや風味も大きく異なります。トマトソースをベースにするロッソは、トマト由来のフレッシュな酸味と凝縮された旨味が特徴です。ガーリックやオレガノといったハーブとの相性も抜群で、食欲をそそる力強い味わいになります。良くも悪くもトマトソースの味が全体の印象を支配するため、一体感のある味わいになりやすいと言えるでしょう。
対してビアンカは、トマトソースがない分、より繊細で素材の味を活かした味わいになります。チーズのミルキーな風味やコク、オリーブオイルの香り、そして乗せる具材一つひとつの個性がダイレクトに伝わってきます。塩やハーブ、ニンニクなどでシンプルに味付けするため、ごまかしが効かず、素材の質が味を大きく左右する、奥深さを持っています。
それぞれに適した具材とは
ソースの特性によって、それぞれ相性の良い具材も変わってきます。ロッソの力強い味わいは、ペパロニ(サラミの一種)やソーセージ、アンチョビといった塩気の強い肉加工品や魚介類とよく合います。また、ピーマンや玉ねぎ、ナスといった野菜も、トマトソースと一緒に加熱することで甘みが増し、相性抜群です。
一方、ビアンカの繊細な味わいには、素材そのものの風味を楽しめる具材が適しています。例えば、数種類のチーズを組み合わせた「クアットロ・フォルマッジ」や、ポルチーニ茸などの香り高いきのこ類、そして焼き上がりに乗せる生ハムやルッコラなどが代表的です。 また、魚介の中でも、しらすのように繊細な味わいのものは、ビアンカでこそその真価を発揮すると言えるでしょう。
素材の味を活かすピザ ビアンカの魅力
トマトソースを使わないピザ ビアンカは、一見するとシンプルに思えるかもしれません。しかし、そのシンプルさこそが、素材本来の味わいを最大限に引き出し、私たちを魅了する奥深い世界へと誘います。ここでは、ピザ ビアンカが持つ独特の魅力について、3つの側面から迫ります。
チーズの風味を存分に楽しめる
ピザ ビアンカは、まさにチーズ好きのためのピザと言えるでしょう。トマトソースの強い酸味や風味がないため、使用するチーズの繊細な香り、コク、食感をダイレクトに感じることができます。例えば、フレッシュなモッツァレラチーズを使えば、そのミルキーで優しい甘みが口いっぱいに広がります。クリーミーなリコッタチーズを加えれば、なめらかで上品な口当たりを楽しめます。
特に、ゴルゴンゾーラのような個性的な青カビチーズは、ビアンカでこそその真価を発揮します。その独特の塩気と刺激的な風味に、はちみつを少し加えるだけで、甘じょっぱさがクセになる絶妙な味わいが生まれます。このように、様々なチーズの組み合わせを試すことで、味わいのバリエーションが無限に広がるのが、ピザ ビアンカの大きな魅力の一つです。
具材の組み合わせが自由自在
トマトソースという絶対的な主役がいないピザ ビアンカは、具材の組み合わせの自由度が非常に高いのも特徴です。 まるで白いキャンバスに絵を描くように、様々な食材で自分だけの一枚を創作することができます。例えば、数種類のきのこをたっぷり乗せて、トリュフオイルで仕上げれば、香り高い贅沢なピザになります。薄切りにしたじゃがいもとローズマリーを乗せれば、ホクホクとした食感が楽しい素朴な味わいの一枚に。
さらに、釜揚げしらすと刻み海苔、長ネギといった和の食材とも意外なほど好相性です。オリーブオイルとチーズが、和とイタリアンの素晴らしい架け橋となってくれます。季節の野菜、例えば春ならアスパラガスやそら豆、秋ならかぼちゃやさつまいもを使えば、旬の味覚を存分に楽しむことも可能です。固定観念にとらわれず、自由な発想で具材を選べる楽しさは、ビアンカならではの醍醐味です。
ワインとのペアリングの楽しみ
料理とお酒の組み合わせを「ペアリング」と呼びますが、ピザ ビアンカはワインとの相性も抜群です。トマトソースのロッソには、酸味と果実味のしっかりした赤ワインが合いますが、ビアンカは合わせるワインの選択肢がより広いのが魅力です。
チーズが主役のシンプルなビアンカであれば、すっきりとした辛口の白ワインがおすすめです。チーズのコクとワインの酸味が互いを引き立て合います。例えば、ソーヴィニヨン・ブランやピノ・グリージョなどが良いでしょう。生ハムやサラミなど、少し塩気の強い具材を使ったビアンカなら、軽めの赤ワインやロゼワインもよく合います。具材やチーズの種類によって、最適なワインを探すのも、ピザ ビアンカを味わう上での大きな楽しみの一つです。
自宅で挑戦!絶品ピザ ビアンカの基本レシピ
レストランで食べるような本格的なピザ ビアンカを、ご自宅で手作りしてみませんか?トマトソースを用意する必要がないので、実はロッソよりも手軽に挑戦できるのが嬉しいポイントです。ここでは、市販のピザ生地を使った基本的なレシピをご紹介します。
必要な材料と下準備
まずは、基本となるシンプルなピザ ビアンカの材料を揃えましょう。慣れてきたら、お好みの具材を追加してアレンジを楽しんでください。
・材料(1枚分)
・市販のピザ生地:1枚
・モッツァレラチーズ:100g程度
・パルメザンチーズ(粉チーズ):大さじ2程度
・にんにく:1片
・オリーブオイル:大さじ2
・塩、黒こしょう:少々
・お好みのハーブ(ローズマリー、バジルなど):適量
・下準備
1. オーブンを250℃など、お持ちのオーブンの最高温度に設定して予熱を開始します。天板も一緒に温めておくと、生地がカリッと焼き上がります。
2. モッツァレラチーズは5mm〜1cm程度の厚さにスライスするか、手でちぎっておきます。
3. にんにくは皮をむいて薄くスライスするか、みじん切りにします。
美味しく作るための生地の作り方とトッピング
市販の生地でも、少し工夫するだけで格段に美味しくなります。トッピングは、チーズの配置がポイントです。
1. ピザ生地をクッキングシートの上に置きます。もし生地が冷蔵で硬い場合は、少し常温に戻しておくと扱いやすくなります。
2. 生地全体にオリーブオイルをスプーンの背などを使って均一に塗ります。 これがソース代わりになり、生地の乾燥を防ぎ、風味豊かに仕上げる役割を果たします。
3. スライスしたにんにくを全体に散らします。
4. モッツァレラチーズを、少し間隔をあけながらバランス良く配置します。 隙間なく敷き詰めると、溶けたチーズが流れ落ちやすくなるので注意しましょう。
5. 上からパルメザンチーズを振りかけ、塩、黒こしょうを軽く振ります。お好みで生のローズマリーなどを散らしても香りが良くなります。
焼き方のコツと注意点
焼き方次第で、仕上がりが大きく変わります。高温で短時間で焼き上げることが、美味しく作る最大のコツです。
1. 予熱が完了したオーブンに、ピザをクッキングシートごと素早く入れます。熱い天板に直接乗せることで、底面がパリッと香ばしく仕上がります。
2. 250℃のオーブンで7〜10分を目安に焼きます。 チーズがぐつぐつと溶けて、生地のフチやチーズに美味しそうな焼き色がついたら完成の合図です。焼き時間はオーブンの機種によって異なるので、こまめに様子を見て調整してください。
3. 焼き上がったら、お好みでフレッシュバジルを飾ったり、追いオリーブオイルを回しかけたりすると、さらに風味がアップします。 熱々のうちに切り分けて、素材の味を存分にお楽しみください。
ピザ ビアンカを格上げするおすすめ具材
基本のピザ ビアンカをマスターしたら、次は様々な具材を加えて、自分だけのオリジナルピザ作りに挑戦してみましょう。トマトソースがない分、組み合わせはまさに無限大。ここでは、相性の良いおすすめの具材をテーマ別にご紹介します。
チーズ好きにおすすめの組み合わせ
ピザ ビアンカはチーズの魅力を最大限に引き出せるピザです。複数のチーズを組み合わせることで、味わいに深みと複雑さが生まれます。
・クアットロ・フォルマッジ風:イタリア語で「4種類のチーズ」を意味する定番の組み合わせです。モッツァレラをベースに、濃厚なゴルゴンゾーラ、コクのあるタレッジョ、香ばしいパルメザンなどを組み合わせます。焼き上がりに、はちみつやメープルシロップをかけると、塩気と甘みの絶妙なハーモニーが楽しめます。
・リコッタとほうれん草:生クリームの代わりにリコッタチーズを使うと、さっぱりとしつつもクリーミーな仕上がりになります。さっと茹でて水気を切ったほうれん草とリコッタチーズを混ぜて生地に塗り、モッツァレラを乗せて焼けば、栄養バランスも良い一品になります。
野菜を使ったヘルシーなアレンジ
旬の野菜を使えば、季節感あふれる彩り豊かなピザ ビアンカが楽しめます。野菜の甘みや食感が、シンプルなチーズの味を引き立てます。
・きのことベーコン:しめじ、舞茸、エリンギなど、数種類のきのこをたっぷり使ったピザは、秋にぴったりの一品です。きのこの豊かな香りと、ベーコンの塩気、チーズのコクが三位一体となって食欲をそそります。仕上げにトリュフオイルをかければ、お店のような本格的な味わいになります。
・じゃがいもとローズマリー:薄くスライスしたじゃがいもを生地に並べ、ローズマリーを散らして焼く、イタリアでは定番の組み合わせです。じゃがいものホクホクとした食感と、ローズマリーの爽やかな香りがたまりません。アンチョビを少し加えると、良いアクセントになります。
お肉や魚介類で豪華に
お肉や魚介類を加えると、食べ応えのある豪華なメインディッシュになります。火を通しすぎないのが美味しく仕上げるコツです。
・生ハムとルッコラ:これはピザ ビアンカの王道ともいえる組み合わせです。 チーズだけを乗せて焼き上げた熱々のピザに、たっぷりの生ハムとルッコラを乗せていただきます。生ハムの塩気とルッコラのほろ苦さが、ミルキーなチーズと絶妙にマッチします。
・釜揚げしらすと長ねぎ:和風の意外な組み合わせですが、驚くほど美味しいのがこのピザです。釜揚げしらすの優しい塩気と、長ねぎの香ばしさが、オリーブオイルとチーズによく合います。刻み海苔を散らして風味を加えたり、少し醤油を垂らしたりするのもおすすめです。
まとめ:ピザ ビアンカの魅力を再発見
この記事では、トマトソースを使わない「白いピザ」、ピザ ビアンカについて、その基本から奥深い魅力までを詳しく解説してきました。
ピザ ビアンカは、イタリア語で「白」を意味する名の通り、トマトソースの代わりにオリーブオイルやチーズをベースにして作られます。 そのため、トマトの強い風味に邪魔されることなく、チーズのコクや具材一つひとつの繊細な味わいをダイレクトに楽しむことができるのが最大の魅力です。 定番のロッソとは異なる、素材本来の味を活かしたその味わいは、一度知るとやみつきになることでしょう。
また、具材の組み合わせが自由自在で、チーズの種類を変えたり、旬の野菜やお肉、魚介を加えたりすることで、アレンジの幅は無限に広がります。 ご家庭でも、市販の生地を使えば意外と手軽に作れるのも嬉しいポイントです。
これまで何気なく「トマトソースのピザ」を選んでいた方も、ぜひ次の機会には「ピザ ビアンカ」を試してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたのピザの世界を豊かに広げてくれる新たな美味しさに出会えるはずです。
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