洋食の出汁の種類を徹底解説!基本のフォンからブイヨンまで美味しい使い方

パスタ・洋食の雑学

洋食の味わいを深く、豊かにしてくれる「出汁」。フランス料理をはじめとする西洋料理では、ソースやスープのベースとして欠かせない存在です。しかし、一言で「洋食の出汁」と言っても、その種類はさまざま。「フォン」や「ブイヨン」といった言葉は聞いたことがあっても、その違いや具体的な使い方については、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。

この記事では、そんな洋食の出汁の種類やそれぞれの特徴、和食の出汁との違いについて、やさしく解説します。ご家庭で本格的な味を再現するための基本的な作り方から、市販品を上手に活用するコツまで、幅広くご紹介します。この記事を読めば、あなたの洋食がもっと美味しく、もっと楽しくなるはずです。

洋食の「出汁」にはどんな種類があるの?基本を徹底解説

フレンチレストランで味わうような深みのあるソースや、心も体も温まる滋味深いスープ。こうした本格的な洋食の美味しさを支えているのが、「出汁」の存在です。日本の和食における昆布や鰹節からとる出汁と同じように、洋食にも料理の基本となる出汁があります。ここでは、洋食の出汁の基本となる種類や、和食の出汁との違いについて詳しく見ていきましょう。

そもそも洋食の「出汁」とは?和食との違い

洋食で使われる出汁は、主にフランス料理で用いられるもので、フランス語では「フォン(Fond)」や「ブイヨン(Bouillon)」と呼ばれます。 これらは、牛肉や仔牛の骨、鶏ガラといった動物性の食材や、玉ねぎ、人参、セロリなどの香味野菜、そしてハーブやスパイスを長時間煮込んで作られます。

和食の出汁が昆布や鰹節、しいたけといった乾物や海産物を使い、比較的短時間で旨味を引き出すのが特徴であるのに対し、洋食の出汁は動物性の骨や肉、生の野菜を長時間かけて煮込むことで、濃厚で複雑なコクと旨味、そして豊かな香りを抽出するのが大きな違いです。

この違いは、それぞれの食文化の背景に由来します。日本では素材そのものの味を活かす引き算の料理が発展した一方、ヨーロッパでは肉食文化を背景に、ソースなどで料理に味わいを加えていく足し算の料理が発展してきました。そのため、洋食の出汁は、料理の「土台」として、ソースや煮込み料理に力強いコクと深みを与える重要な役割を担っているのです。

大きく分けて2種類!「フォン」と「ブイヨン」

洋食の出汁は、その役割や作り方によって、大きく「フォン」「ブイヨン」の2つに大別されます。

  • フォン(Fond)
    フランス語で「土台」や「基礎」を意味する言葉で、その名の通り、主にソースのベースとして使われる濃厚な出汁です。 仔牛の骨や鶏ガラなどをオーブンで焼き付けてから、香味野菜と一緒に長時間煮込むことで、深いコクと色合いを引き出します。ビーフシチューのデミグラスソースなどが代表的な例です。
  • ブイヨン(Bouillon)
    フランス語で「だし汁」そのものを指し、主にスープやポトフのような煮込み料理のベースとして使われる、比較的あっさりとした出汁です。 フォンとは異なり、材料を焼き付けずにそのまま煮込むため、澄んだ色合いとクリアな味わいが特徴です。ポタージュやミネストローネなど、素材の味を活かしたい料理に向いています。

このように、フォンは料理に濃厚なコクと深みを与える「ソースの土台」、ブイヨンは料理全体の味を支える「スープの土台」と覚えると分かりやすいでしょう。

フォンの中の代表格「フォン・ド・ヴォー」とは

「フォン」の中でも、特に有名でフランス料理の基本中の基本とされるのが「フォン・ド・ヴォー(Fond de veau)」です。 これはフランス語で「仔牛の出汁」を意味します。

作り方は、まず仔牛の骨やスジ肉をオーブンで香ばしく焼き色がつくまでじっくりと焼きます。その後、同じく炒めて甘みを引き出した玉ねぎ、人参、セロリといった香味野菜(ミルポワ)や、トマト、ハーブなどと一緒に大きな鍋に入れ、水を加えて長時間、アクを取りながらコトコトと煮込んでいきます。

この工程を経ることで、仔牛の骨から溶け出すゼラチン質による自然なとろみと、焼き付けられた骨や肉、野菜の香ばしさが凝縮された、深い琥珀色で濃厚なコクのある出汁が生まれます。

フォン・ド・ヴォーは、そのままで飲むことはありませんが、ビーフシチューやハヤシライスといった煮込み料理のベースや、ステーキソースなどの味の決め手として使われます。 家庭で一から作るのは非常に手間と時間がかかりますが、このフォン・ド・ヴォーを使うことで、料理の味が格段にプロの味に近づきます。

鶏がベースの「フォン・ド・ヴォライユ」

フォン・ド・ヴォーと並んでよく使われるのが、鶏をベースにした「フォン・ド・ヴォライユ(Fond de volaille)」です。これは「鶏の出汁」を意味し、鶏ガラや手羽先などを使って作られます。

フォン・ド・ヴォーが仔牛を使うのに対し、フォン・ド・ヴォライユは鶏ガラを使うため、比較的クセがなく、あっさりとしていながらも鶏のしっかりとした旨味とコクが感じられるのが特徴です。 クリームソースや鶏肉を使った煮込み料理、ポタージュスープなど、幅広い料理に活用できます。

フォン・ド・ヴォライユにも、材料を焼き付けてから煮込む茶色いタイプ(フォン・ブリュン)と、焼き付けずに煮込む白いタイプ(フォン・ブラン)があります。作りたい料理のイメージに合わせて使い分けることで、より本格的な味わいを追求することができます。家庭で作る場合は、比較的手に入りやすい鶏ガラや手羽先を使えるため、フォン・ド・ヴォーよりも挑戦しやすいかもしれません。

魚介の旨味「フュメ・ド・ポワソン」

肉系の出汁だけでなく、魚介料理に欠かせないのが「フュメ・ド・ポワソン(Fumet de poisson)」です。 これは「魚の出汁」を意味し、主に白身魚のアラ(骨や頭など)を香味野菜と一緒に煮出して作ります。

フュメ・ド・ポワソンは、肉系のフォンと比べて煮込み時間が30分程度と短いのが特徴です。 長時間煮込むと魚の生臭さやえぐみが出てしまうため、短時間で旨味を最大限に引き出すことがポイントとなります。

作り方は、まず魚のアラをきれいに洗い、血合いなどを取り除いて臭みの元となる不純物を除去します。 薄切りにした香味野菜をバターで炒め、そこにアラと白ワイン、水を加えて煮出していきます。このとき、沸騰させずにアクを丁寧に取り除くことで、澄んだ美しい出汁に仕上がります。

鯛やヒラメなどの白身魚からとったフュメ・ド・ポワソンは、上品で繊細な旨味があり、魚介のポタージュやクリームソース、ブイヤベースやリゾットなどのベースとして、料理に魚介の豊かな風味を加えてくれます。

基本の洋食出汁「ブイヨン」を深掘り!

洋食のスープや煮込み料理に欠かせない「ブイヨン」。フォンが主にソースの土台となる濃厚な出汁であるのに対し、ブイヨンはより広い用途で使われる、いわば「万能だし」です。ここでは、そんなブイヨンの特徴や、よく混同されがちな「コンソメ」との違い、そして家庭で楽しめるブイヨンの作り方についてご紹介します。

「ブイヨン」と「コンソメ」の違いって何?

スーパーのスープ売り場に行くと、「ブイヨン」と「コンソメ」の素が並んでいて、どちらを選べば良いか迷った経験はありませんか?この二つはよく似ていますが、実は明確な違いがあります。

ブイヨンは、フランス語で「出汁」そのものを意味します。 牛肉や鶏肉、香味野菜などを煮込んで作る、味付けされる前のベースとなる出汁のことです。 そのため、料理の隠し味としてコクを加えたり、スープのベースとして使ってから塩コショウなどで好みの味に調えたりします。

一方、コンソメはフランス語で「完成された」という意味を持つ言葉です。 その名の通り、ブイヨンをベースにさらに肉や野菜を加えて旨味を凝縮し、塩などで味を調えた「完成されたスープ」なのです。 卵白を使ってアクを取り除く工程を経るため、澄んだ美しい琥珀色をしているのが特徴です。 そのままお湯に溶かすだけで美味しいスープとして飲むことができます。

ブイヨン (Bouillon) コンソメ (Consommé)
意味 出汁 完成されたスープ
役割 料理のベース、隠し味 そのまま飲むスープ、料理の味付け
味付け 基本的にされていない 塩などで調味済み
作り方 肉や野菜を煮込んだもの ブイヨンをベースにさらに旨味を加え、調味したもの

市販の固形や顆粒の製品では、この違いが曖昧になっていることもありますが、基本的には「ブイヨンはだし」「コンソメはスープ」と覚えておくと、料理に合わせて使い分けやすくなりますよ。

家庭で挑戦!チキンブイヨンの作り方

本格的なブイヨンは時間がかかりますが、鶏手羽先などを使えば家庭でも意外と手軽に美味しいチキンブイヨンを作ることができます。 自分で作ったブイヨンは、市販のものにはない格別の美味しさです。

【材料】

  • 鶏手羽先…6~8本(約500g)
  • 長ねぎの青い部分…1本分
  • 人参…1/2本
  • セロリ…1/2本
  • 水…1.5リットル
  • 塩…少々
  • ローリエ…1枚
  • 粒こしょう…数粒

【作り方】

  1. 下処理をする: 鶏手羽先は臭みを取るために、鍋に入れてひたひたの水を加え、一度沸騰させます。アクが出てきたら火から下ろし、お湯を捨てて手羽先をさっと水で洗います。
  2. 野菜を切る: 人参、セロリは大きめのざく切りにします。
  3. 煮込む: 鍋に下処理した手羽先、野菜、長ねぎの青い部分、水、塩、ローリエ、粒こしょうを入れ、火にかけます。
  4. アクを取る: 沸騰してきたら弱火にし、表面に浮いてくるアクを丁寧に取り除きます。 アクをこまめに取ることで、澄んだ美味しいブイヨンになります。
  5. じっくり煮出す: 蓋を少しずらしてのせ、弱火で1時間~1時間半ほど、コトコトと煮込みます。
  6. 漉す: 火を止めて、目の細かいザルやキッチンペーパーを敷いたザルで静かに漉します。 これで黄金色のチキンブイヨンの完成です。

完成したブイヨンは、スープはもちろん、リゾットやカレーなど、様々な料理のベースとして使えます。 冷蔵で2~3日、冷凍すれば1ヶ月ほど保存可能です。

野菜の甘みが凝縮!ベジタブルブイヨンの魅力

肉や魚を使わずに、野菜だけで作るのが「ベジタブルブイヨン」です。 玉ねぎ、人参、セロリなどの香味野菜を中心に、トマトやきのこ、パセリの茎などを加えて煮込むことで、野菜本来の優しい甘みと奥深い旨味が引き出されます。

ベジタブルブイヨンの魅力は、そのすっきりとしたクリアな味わいと、どんな料理にも合わせやすい汎用性の高さにあります。肉や魚料理のベースに使えば素材の味を引き立て、野菜中心のポタージュやミネストローネに使えば、より一層野菜の風味を豊かにしてくれます。

また、普段料理で捨ててしまいがちな野菜の皮やヘタ、芯といった部分を活用して作ることもできます。 これは「ベジブロス」とも呼ばれ、フードロス削減にもつながるサステナブルな出汁としても注目されています。 野菜の皮には栄養が豊富に含まれているため、美味しくて体にも優しいのが嬉しいポイントです。 家庭菜園で採れた野菜の切れ端などを使えば、自分だけのオリジナルブイヨンを楽しむこともできます。ヴィーガンやベジタリアンの方にはもちろん、ヘルシー志向の方にもおすすめの出汁です。

もう一つの主役!「フォン」の世界

洋食、特にフランス料理のソースの神髄とも言えるのが「フォン」です。 スープのベースとなるブイヨンとは一線を画し、料理に圧倒的な深みとコクを与える、まさに「縁の下の力持ち」ならぬ「味の土台」です。ここでは、そんなフォンの魅力をさらに深く掘り下げていきましょう。

濃厚な旨味の茶色い出汁「フォン・ブラン」と「フォン・ブリュン」

フォンは、その作り方と色合いによって大きく2つの種類に分けられます。それが「フォン・ブラン(fond blanc)」「フォン・ブリュン(fond brun)」です。

  • フォン・ブラン(白いフォン)
    「ブラン」はフランス語で「白」を意味します。その名の通り、澄んだ色合いが特徴のフォンです。仔牛の骨や鶏ガラ、魚のアラなどを、香味野菜と共に焼き付けずにそのまま水から煮出して作ります。素材を焼かないため、旨味はありながらもクセがなく、繊細で上品な味わいに仕上がります。鶏肉のクリーム煮込みや、白身魚のソースなど、料理の色を白く仕上げたい場合や、素材そのものの風味を活かしたい時に用いられます。
  • フォン・ブリュン(茶色いフォン)
    「ブリュン」はフランス語で「茶色」を意味します。こちらは、仔牛の骨やスジ肉などをオーブンでこんがりと焼き付けてから、じっくり炒めて甘みを引き出した香味野菜と共に煮込んで作ります。 この「焼き付ける」という工程が、フォン・ブリュンに香ばしい風味と深いコク、そして美しい琥珀色をもたらします。代表的なものが「フォン・ド・ヴォー」で、ビーフシチューでおなじみのデミグラスソースのベースとなる、濃厚で力強い味わいの出汁です。

この二つを使い分けることで、フランス料理の多彩なソースが生まれるのです。

フォン作りに欠かせない「ミルポワ」とは?

フォンやブイヨンを作る際に、必ずと言っていいほど登場するのが「ミルポワ(Mirepoix)」という言葉です。これは特定の野菜の名前ではなく、フォンやブイヨンの香りづけや風味のベースとして使われる香味野菜を角切りにしたものを指すフランス料理の用語です。

基本となるミルポワの野菜は、玉ねぎ、人参、セロリの3種類です。 一般的には、玉ねぎ2:人参1:セロリ1の割合で使われることが多いですが、作る料理によってその比率は変わります。これらの野菜をバターなどでじっくりと炒めることで、野菜の持つ甘みと香りが引き出され、出汁に複雑で奥深い風味を与えてくれます。

フォン・ブランを作る際は野菜に色がつきすぎないように弱火でゆっくりと炒め(スュエ)、フォン・ブリュンを作る際は香ばしい焼き色がつくまでしっかりと炒めるなど、作りたいフォンによって炒め方を変えるのも重要なポイントです。このミルポワこそが、洋食の出汁の味わいを決定づける名脇役なのです。

プロの味!フォン・ド・ヴォーを使った本格レシピ

家庭で一からフォン・ド・ヴォーを作るのは大変ですが、最近では缶詰やレトルトパウチなど、高品質な市販品も手に入りやすくなりました。 これらを上手に活用すれば、家庭でも手軽にレストランのような本格的な煮込み料理やソースを作ることができます。

特におすすめなのが、牛肉の赤ワイン煮込みです。市販のフォン・ド・ヴォーを使えば、長時間煮込んだような深いコクと旨味を手軽に再現できます。

【簡単本格!牛肉の赤ワイン煮込み】

  1. 牛すね肉などの煮込み用の牛肉に塩コショウ、小麦粉をまぶし、フライパンで表面に焼き色をつけます。
  2. 鍋に、炒めた玉ねぎ、人参、セロリ(ミルポワ)と、焼き色をつけた牛肉を入れます。
  3. 赤ワインを加えてアルコールを飛ばし、そこに市販のフォン・ド・ヴォー、トマトペースト、ローリエなどを加えて、牛肉が柔らかくなるまでじっくり煮込みます。
  4. 最後に塩コショウで味を調えれば完成です。

市販のフォン・ド・ヴォーは、ビーフシチューやハヤシライスのルウに少し加えるだけでも、格段にコクが増して美味しくなります。 いつもの洋食をワンランクアップさせたい時に、ぜひ試してみてください。

もっと知りたい!個性豊かな洋食の出汁

これまでご紹介したフォンやブイヨンの他にも、洋食の世界には特定の目的や食材に合わせて作られる、個性豊かな出汁が存在します。これらを知ることで、さらに料理の幅が広がり、専門店のような味わいに近づけることができます。ここでは、少しマニアックだけれども知っておくと便利な、特別な出汁の世界をご紹介します。

煮込み料理の味の決め手「クール・ブイヨン」

「クール・ブイヨン(Court-bouillon)」は、フランス語で「短い(court)ブイヨン」を意味します。 その名の通り、フォンなどのように長時間煮込むのではなく、20〜30分程度の短時間で作られるのが特徴です。

主な材料は、水、白ワイン、酢、そして玉ねぎや人参、セロリといった香味野菜、ハーブ、香辛料などです。 クール・ブイヨンの最大の目的は、魚介類や鶏肉などの素材の臭みを取り除き、下味をつけることにあります。 特に、繊細な味わいの白身魚や、エビ、カニなどの甲殻類を茹でる際に用いられます。

例えば、魚のポシェ(ポーチドエッグのように、沸騰しない程度のお湯で静かに火を通す調理法)を作る際に、ただのお湯ではなくクール・ブイヨンを使うことで、魚の生臭さが抑えられ、ハーブやワインの風味が素材に移り、仕上がりが格段に上品になります。 このように、クール・ブイヨンは料理のソースやスープのベースとして使うのではなく、あくまで「食材を茹でるための、風味豊かな煮汁」という、少し特殊な役割を持つ出汁なのです。

甲殻類の旨味が詰まった「フュメ・ド・クリュスタッセ」

魚介系の出汁として「フュメ・ド・ポワソン(魚の出汁)」をご紹介しましたが、それとは別に、エビやカニといった甲殻類専門の濃厚な出汁があります。それが「フュメ・ド・クリュスタッセ(Fumet de crustacés)」です。

これは、エビの頭や殻、カニの殻などを、香味野菜と共に炒めて香ばしさを引き出し、白ワインやトマト、水などを加えて煮詰めて作られます。甲殻類の殻を炒めることで、独特の香ばしい香りと赤い色素が引き出され、濃厚な旨味と美しいオレンジ色が特徴の出汁が出来上がります。

この出汁は、オマールエビのビスク(クリームスープ)や、魚介のパスタソース、アメリケーヌソース(甲殻類を使った濃厚なソース)などのベースとして使われます。フュメ・ド・クリュスタッセを使うことで、家庭ではなかなか出せない、甲殻類の味噌のコクと旨味が凝縮された、レストランのような本格的な味わいを実現することができます。エビの頭や殻は捨ててしまいがちですが、これを使えば絶品の出汁がとれることを覚えておくと、料理のレパートリーがぐっと広がります。

ジビエ料理に使われる特別な「フォン・ド・ジビエ」

「ジビエ(Gibier)」とは、狩猟によって得られた野生鳥獣の肉を指します。鹿、猪、鴨などが代表的です。これらのジビエは、家畜の肉とは異なる独特の強い風味と香りを持っています。そのため、ジビエ料理には、その力強い味わいに負けない、特別な出汁が使われます。それが「フォン・ド・ジビエ(Fond de gibier)」です。

フォン・ド・ジビエは、鹿や猪の骨を、フォン・ド・ヴォーと同様にオーブンで焼き付け、香味野菜やジュニパーベリー(ジビエと相性の良いスパイス)などの香辛料と共に長時間煮込んで作られます。ジビエの骨から取れる出汁は、非常に濃厚で野性味あふれる力強い風味を持ち、ジビエ肉を使った煮込み料理やソースのベースとして、その個性を最大限に引き立てます。

例えば、鹿肉の赤ワイン煮込みを作る際に、フォン・ド・ヴォーの代わりにフォン・ド・ジビエを使うことで、料理全体に一体感が生まれ、より深みと複雑さのある本格的なジビエ料理に仕上がります。一般の家庭で手に入れることは難しいですが、フランス料理の奥深さを感じさせてくれる特別な出汁の一つです。

家庭で手軽に楽しむ洋食の出汁

本格的なフォンやブイヨンを家庭で一から作るのは、時間も手間もかかり大変です。しかし、諦める必要はありません。市販の製品を上手に活用したり、ちょっとした工夫をしたりするだけで、いつもの料理がぐっと本格的な味わいに変わります。ここでは、家庭で手軽に洋食の出汁を楽しむためのアイデアをご紹介します。

時間がない時に便利!市販の出汁(ブイヨン・コンソメ)の選び方

スーパーに行くと、固形(キューブ)、顆粒、粉末、液体など、様々なタイプの洋風だしが並んでいます。 時間がない時には、これらの市販品はとても心強い味方です。選ぶ際には、それぞれの特徴を知っておくと便利です。

  • 固形(キューブ)タイプ: 一個あたりの分量が決まっているので計量が簡単です。油分で固められていることが多く、コクが出やすいのが特徴です。じっくり煮込む料理に向いています。
  • 顆粒・粉末タイプ: サッと溶けやすく、少量だけ使いたい時にも便利です。炒め物やパスタの下味など、幅広い用途に使えます。
  • 液体タイプ: 水に溶かす手間がなく、そのまま使えます。本格的な味わいを追求した製品も多く見られます。
選ぶ際のポイントは、原材料表示を確認することです。チキンベースなのかビーフベースなのか、どんな野菜が使われているかによって風味が異なります。 また、化学調味料無添加のものや、塩分控えめのものなど、自分の好みや健康志向に合わせて選ぶのも良いでしょう。 まずはいくつかの種類を試してみて、ご家庭の定番を見つけるのがおすすめです。

市販品をワンランクアップさせる活用術

市販のブイヨンやコンソメも、少し手を加えるだけで、より本格的な味わいに近づけることができます。

香味野菜やハーブを加えるのが最も簡単な方法です。玉ねぎやセロリの切れ端、パセリの茎、ローリエなどを市販の出汁と一緒に煮込むだけで、香りが格段に豊かになります。 また、炒め玉ねぎを加えると甘みとコクがプラスされます。

もう一つのテクニックは、複数の市販品を組み合わせることです。例えば、チキンコンソメにビーフブイヨンを少量加えることで、味に深みと複雑さが生まれます。さらに、和風だしを隠し味に少量加えるという裏技もあります。昆布のグルタミン酸や鰹節のイノシン酸といった旨味成分が、洋風の出汁と合わさることで、驚くほどの相乗効果を生み出し、味わいに奥行きを与えてくれます。

野菜くずで簡単!自家製ベジブロス(野菜だし)の作り方

普段捨ててしまいがちな野菜の皮やヘタ、芯などを活用して作る「ベジブロス」は、家庭で手軽に作れる無添加の野菜だしです。 環境にも優しく、野菜の栄養を丸ごと摂ることができると注目されています。

【材料(作りやすい分量)】

  • 野菜くず…両手いっぱいくらい(約200~300g)
    (玉ねぎの皮、人参の皮やヘタ、セロリの葉、きのこの石づき、パセリの茎など)
  • 水…1~1.5リットル
  • 酒(あれば)…少々

【作り方】

  1. 鍋に野菜くずと水を入れ、火にかけます。
  2. 沸騰したら弱火にし、アクを取りながら20~30分ほど煮出します。 沸騰させ続けると野菜のえぐみが出やすいので、コトコトと静かに煮るのがポイントです。
  3. 火を止めて、ザルなどで野菜くずを漉せば完成です。
ポイント
キャベツやブロッコリーの芯などアブラナ科の野菜や、アクの強い野菜を入れすぎると、苦味や特有の匂いが出ることがあるので注意しましょう。 玉ねぎの皮を入れると、出汁にきれいな色が付きます。

出来上がったベジブロスは、スープやカレー、リゾットなど、水の代わりに使うだけで料理の旨味が格段にアップします。冷凍保存も可能なので、野菜くずがたまったら作っておくと非常に便利です。

まとめ:洋食の出汁の種類を理解して料理の幅を広げよう

この記事では、洋食の美味しさの土台となる「出汁」について、その種類や特徴、作り方などを詳しく解説してきました。

  • 洋食の出汁は主に「フォン」「ブイヨン」に大別される。
  • フォンはソースのベースとなる濃厚な出汁で、仔牛がベースの「フォン・ド・ヴォー」や鶏ベースの「フォン・ド・ヴォライユ」、魚介の「フュメ・ド・ポワソン」などがある。
  • ブイヨンはスープや煮込み料理に使われる比較的あっさりした出汁で、味付けをしたものが「コンソメ」と呼ばれる。
  • 香味野菜を刻んだ「ミルポワ」は、これらの出汁の風味を豊かにするために欠かせない。
  • 家庭でも、市販品を活用したり、野菜くずで「ベジブロス」を作ったりすることで、手軽に本格的な味を楽しむことができる。

一見難しそうに思える洋食の出汁ですが、それぞれの役割や違いを知ることで、料理の目的に合わせて適切に使い分けることができるようになります。市販の製品に少し手を加えるだけでも、いつものシチューやカレーが格段に美味しくなることを実感できるはずです。ぜひ、洋食の出汁の世界に一歩踏み出して、ご家庭の食卓をより豊かに彩ってみてください。

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